激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「それより、戻ってきたことは誰かに伝えたのか?」
「ううん、真っ先にここに来たから。それに、……実家に帰るつもりもない」
「そうか」

颯真は複雑な思いで頷いた。確かに今森野家に弥生が顔を出せば、今度こそ問答無用でどこか家の得となる男へ嫁がされるのは目に見えている。それならば、もう実家とは縁を切ってしまうのもひとつの手段なのかもしれない。

「ならせめて、千花には連絡してやって」

そう言うと弥生は嬉しそうに頷き千花に電話を掛けたが、なかなか出ない。試しに颯真も掛けてみたが繋がらなかった。

「おかしいな。この時間は仕事も終わってるはずなんだけど」

颯真は電話に出ない千花に首を傾げつつ、弥生に尋ねた。

「いつまでこっちにいるんだ?」
「せっかく久しぶりに日本に戻ってきたから、こっちで年越ししてから戻る予定」
「じゃあ時間はあるのか。1度飯でも行くか」
「そうね!こっちにいる間はアナスタシアってホテルにいるから」
「わかった」

結局何度か電話をしたものの千花には繋がらず、近々時間を取って4人で会おうと約束をして仕事に戻った。


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