激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「わっ、いきなり…」
「この照明だとなおのこと雰囲気あるな」

最初の展示はエリザベートのデスマスクや暗殺の際に使用されたとされる凶器。青い光に照られた幻想的な空間を進んでいく。

続いて皇帝であるフランツとの婚約にまつわる話とともに、婚約式で着用していたというドレスが展示されている。

千花はその婚約の逸話に釘付けだった。

15歳のエリザベートは姉であるヘレネとのお見合いの席でフランツに見初められ、16歳でオーストリアの皇后になった。

華やかな宮廷生活に馴染めず、姑であるゾフィ皇太后との関係も悪かった。ただ従順なお妃として世継ぎを求められ、重圧に苦しんだ末に王宮を飛び出し、旅に明け暮れた末に暗殺された孤独な皇后。

「元々、皇帝とお見合いして結婚するはずだったのはエリザベートのお姉さんだったんだ……」

ウィーンで今なお絶大な人気を誇るエリザベートと自分の意外な共通点を見つけた千花は、隣に立つ颯真が自分を見つめているのにも気付かずに呟いた。

「私達みたい…」

眩い大きなシャンデリアに照らされたドレスや肖像画を見ながら、姉の身代わりで結婚した自分を重ね合わせた。


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