激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「失礼します。こちら頼まれていた九州の複合施設に関する人口と人流に関する資料です。あとで目を通しておいてください」
「あぁ、助かる」
「…寝不足ですか」
少し疲れた顔をしていたのか、颯真を見るなり宮城がそう聞いていた。
時計を確認すると正午を少し過ぎた頃。休憩にしようと身体を椅子の背に預けた。
「昨日弥生に会った」
「は?!弥生?!」
さすがの宮城も突然のことに驚いたのか、秘書の仮面が剥がれ、いつもよりも声が大きくなる。颯真は可笑しそうに笑ってスマホを手にしながら、昨日のことを詳しく話した。
「へーぇ、彼氏とニューヨーク…。まぁ弥生らしいっちゃらしいのか」
「まぁな」
「それで?昨夜は姉妹の感動の再会に付き合って寝不足ってことか?」
「いや…」
出張に出て何度か千花のいない夜はあったものの、自宅で1人で眠ったのは結婚後初めてだった。確かに昨夜はよく眠れなかったが、仕事に支障が出るほど寝不足なわけではない。
ただ仕事に集中しきれていないのは確かで、今日何度目かのため息をつく。手元のスマホはやはり何の通知も示さないままだった。
「千花に連絡がつかないんだ」
「千花ちゃん?」
「昨日は友達の家に泊まるって夕方にメッセージが入ったきり連絡が取れない。弥生が電話しても出ないみたいだ」