激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「……千花!」

颯真の手の中で、メモがくしゃりと音を立てた。

ずっと態度で愛を示し続けてきたつもりだった。
政略結婚をしたと思っているであろう彼女を追い詰めないよう言葉にはしなくとも、千花が愛しくて仕方ないという気持ちは隠さずに接してきた。

ゆっくりでもいい。千花の気持ちが自分に向くように、好きになってもらえるように。

4年という長い婚約期間を経て入籍し、ようやく千花が自分のものになった嬉しさで彼女の気持ちを確かめることなく抱いてしまったが、それ以降も拒まれることはなく、自分たちは確かに夫婦になっていっているのだと思っていた。

しかし…、それは全て颯真の思い込みだったのだろうか。

幼い頃から優秀な姉と常に比較されてきた千花が、それをコンプレックスに感じていたことはなんとなく気付いていた。

だが弥生と千花は全く違う魅力があり、颯真は1度だって千花が弥生に劣っていると感じたことはない。周囲が何を言おうと、颯真の目には千花が世界で1番可愛く映っている。

だからこそ颯真は千花を弥生と比べるようなことはしなかったし、千花といても弥生の話題が出ることはなかった。意識して避けていたというわけではなく、千花といる時は目の前の彼女のことで頭がいっぱいだったからだ。

千花が働き出し彼女の魅力に気付く男が近くにいると知った最近は、独占欲も嫉妬心も隠しておくことは出来ず、年上の余裕なんて欠片もない。

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