激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
そんな自分を見ている千花は、当然颯真の気持ちなんてわかっているのだと思っていたし、彼女も少なからず自分に心を寄せてきてくれていると感じていた。
(俺と弥生に元々関係があったと思っているとしたら……)
そもそもこの結婚自体は確かに弥生が失踪してしまったせいで降って湧いた話だった。
千花も、両親が弥生の代わりに自分を差し出したと感じているだろう。
(千花は俺にとっても、自分は『弥生の代わり』だと思ってきた……?!)
頭を重い鈍器で殴られたような衝撃が走る。
『颯真と弥生が本当に愛し合ってる恋人同士だったって勘違いしてないかってこと』
『話してて何度か引っかかったことがあるんだ。弥生の話をしたがらないような、聞きたくないみたいな雰囲気で…』
宮城が言っていたことが本当だとしたら。
千花は今までどれだけ思い悩んできたのだろう。
自分の姉と付き合っていた男と婚約させられ、結婚しなければならなかった千花の心の内を思えば、なぜちゃんと気持ちを言葉にしなかったのかと後悔の念しかない。
弥生とは恋愛関係になったことはないし、互いにそんな感情を持ち合わせたこともない。ただ利害の一致で噂を放置してきただけだった。
いつか婚約話を破棄するまでの風除け。そんなふうに軽く考えていたし、当然千花には弥生から話しているものと疑いもしなかった。