激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
その後、千花は颯真から弥生の5年前の事情と、今回一時帰国で帰ってきているということを聞かされた。
「…恋人と…、ニューヨーク……」
「弥生らしいというかなんというか」
「…もう、一言くらい言ってくれたらよかったのに。お姉ちゃんのバカ…」
「……千花」
「でも、…幸せそうだったんだよね?」
「あぁ」
「うん、じゃあ…よかったぁ」
ホッと肩の力が抜けた。
颯真との仲を気にしていたとはいえ、やはり大好きな姉。事情も話さずに勝手にいなくなってしまったことは寂しいし苦しい思いもしたけれど、幸せだと聞けば嬉しくないはずがない。
胸のあたりをぎゅっと掴みながら、少し気の抜けたような笑顔を浮かべた。
そんな千花の様子を見ていた颯真の目が大きく見開かれたあと、ゆっくりと優しい表情で彼女を見つめる。
「千花。手、貸して」
颯真は千花の左手を取ると、ポケットから出した指輪を薬指に嵌めた。
「颯くん…」
「これと離婚届見つけた時、心臓が止まるかと思った」
「…ごめんなさい」
千花だって好き好んで外したわけではない。それでも目の前の悲痛な表情の颯真を見れば、謝らずにはいられなかった。