激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
何もかも自分の中で消化しようと耐え続け、臨界点を超えて急に爆発してしまった感情。
ずっと姉と自分は正反対だと思ってきたが、少し申し訳無さそうな顔をした姉を見て、もしかしたら自分達は少し似ているところもあるのかもしれないと感じた。
それに不謹慎ではあるが、姉が逃げたおかげで颯真とこうして一緒にいることが出来ている。
言葉が足りずに泣いたり悩んだりしたこともあったけど、今幸せだということが千花にとっては重要だった。
それから、今一緒に海外で生活をしている姉の恋人、二条大和(にじょう やまと)という男性を紹介された。
当時はとても森野家の長女と結婚できるような社会的地位もなく、駆け落ち同然で日本から攫うことしか出来なかったと大和にも謝られ、千花はとても恐縮してしまった。
弥生の8つ年上で現在35歳の彼は観光ビジネス会社のCEOを務めているらしく、会社の業績も安定してきたとのことで、近々日本に拠点を移すことも検討しているという。
「お姉ちゃん、日本に帰ってくるかもしれないの?」
「ゆくゆくはね。まだわからないけど」
「やったぁ!…あ、でもあの…、実家には?」
恐る恐る聞いてみたが、弥生は小さく微笑んでゆっくりと首を振るだけだった。そんな姉の意志を尊重しようと、千花も小さく頷いてみせた。
再会を果たしてから弥生が一時帰国を終えてニューヨークに戻るまで、千花は弥生と頻繁に会い、姉妹の交流を深めた。