激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「…甲斐性なし扱いされるのは心外だな」
「もう、本気でそう思ってるわけじゃないに決まってるでしょ。お姉ちゃん、昔から私に服買い与えるの趣味みたいなものだっ…ん!」
唐突に唇を塞がれ、千花は驚きつつそれを受け入れる。ちゅっと音を鳴らして離れたのが恥ずかしくて俯くと、颯真は笑いながら「明日は朝から買い物だな」と弥生に対抗心を燃やしている。
「えっ!?もう本当に十分だから。それに、明日はひなあられの試作をしたいなって思ってて」
「ひなあられ?」
「そう。矢上さんとね、今年からひな祭りのおやつも既製品じゃなくて手作りできないかって考えてて。月曜に保育園で作る前に、家でも試してみようかとおも…っきゃ!」
颯真は夕食の準備に取り掛かろうと立ち上がった千花の腕を引き寄せ、そのまま抱き上げる。
「颯くん?!あの、私、晩ご飯の準備…」
「先に千花が食べたい」
「な…っ」
とんでもない発言に慌てている間に、颯真の足は寝室へ向かう。
「弥生に矢上に、なんだって俺の奥さんの周りには邪魔者が多いんだろうな」
千花をベッドに降ろしながら不機嫌そうにため息を吐く颯真が可笑しくて、千花は笑ってしまう。
「なに、邪魔者って」
「無自覚なところも心配なんだよ。やっと結婚して俺のものになったと思ってたけど、一向にひとり占めしてる気分になれない」
「そんなこと…」
「楽しそうに仕事してる千花も魅力的だから仕方ないんだけど」