激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「千花はほんとに美味しそうに食べるな。連れてきた甲斐があったよ」
「だって、ほんとに美味しいから!颯くんはデザートいいの?」

頬杖を付き、ブラウナーというエスプレッソに生クリームの入ったウィーンの定番コーヒーを飲む颯真は、異国の地でも人目を引くらしく周囲の女性客からの視線が集まっている。

それに気付いているのかいないのか、全く気にする様子を見せず、真っ直ぐに千花を見つめながら答える。

「うん、じゃあせっかくだし一口だけ」

そう言って小さく口を開けて待っている。

(ん…?)

若干の間のあと、やっとその意味に気が付いた千花は、真っ赤になりながら慌ててしまう。

「え…っ?!」

今までにない颯真の行動に動揺しつつも、口を開けたまま長く待たせてはいけないと、手元のケーキを一口大にフォークで刺し、彼の口元へ運ぶ。

まるで仲のいい恋人同士のような行動に、フォークを持っている手が震えそうになった。

(これって…だって、『あーん』だし、か、間接キス……!)

颯真との触れ合いは、手を繋ぐことの他は挙式での誓いのキスのみ。同じフォークを使うというだけでも意識してしまう。

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