激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

失踪は颯真にとっても寝耳に水だったらしく、なんとか連絡を取ろうと探したが見つからなかったと、当時悲痛な面持ちで話してくれた。

その表情を見た時にはっきりと悟ったのだ。

颯真は姉を愛しているのだと……。


千花が大学在学中、何度も彼から投げかけられた台詞。

『弥生から連絡はない?』

辛そうに眉間に皺を寄せながらそう聞かれるたび、自分は未だに姉の身代わりなのだと痛感する。

政略結婚の相手だと割り切ればそれも姉へのちょっとしたコンプレックスだと忘れられたのに、颯真は想定外に自分に優しくしてくれた。

仕事で忙しいだろうに自分と会う時間を作ってくれたり、一緒に出掛けると手を繋いで、常に紳士的な対応をしてくれる。

出張へ赴けばその土地のお土産を買ってきてくれるし、会えない時期が続くと電話をくれたりもした。

そんな大人な男性の包容力溢れる気遣い、さらにこの容姿。極めつけは初恋の相手とくれば、気持ちが彼に傾かないはずがない。

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