激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
弥生のことを聞かれるたびに、徐々に胸の痛みが大きくなる。まだ姉のことを思っているのだと思い知らされ、泣きたくなった。
それでも結婚準備を進める頃には全く聞かれなくなっていたので、少し油断していた。
まさか結婚式当日に、あの台詞を聞こうとは思わなかった。
『結局、今日まで弥生から連絡は来なかったか…』
颯真と一緒に選んだウェディングドレスを着ながら、愕然とした気持ちで彼を見つめた。
それなのに……。
「ん…っ、ふ、ぁ……」
白い壁、柔らかな黄色いカーテンに映える真っ青なクッションやベッドカバー。まるでお姫様のような真っ白で大きな鏡のドレッサー。何人掛けかもわからないほど大きなダイニングテーブル。
広さも調度品も豪華すぎて気後れしてしまうほどのロイヤルスイートルーム。
専用バトラーサービスもついていて、チェックイン前に連絡を入れればルームサービスの手配やバスルームの支度などもしてくれるという。
シティビューの間取りで、窓からは緑あふれる景観が楽しめる素晴らしい部屋だ。
到着初日の昨日は緊張と時差ボケで、そのことを実感する前にいつの間にか眠ってしまっていたらしい。