激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

午前中にホーフブルク宮殿を堪能し、午後はその敷地内にある国立図書館やアウグスティーナ教会を見て回った。

ディナーは正統派ウィーン料理を楽しめるというレストランに足を伸ばし、フランツが好きだったと言われるターフェルシュピッツという牛肉を煮込んで作る料理と少しのワインを頂いた。

颯真と向かい合い、美味しい料理に感動し、あまり強くないアルコールにふわふわしながらホテルに戻って。そして気付けば、なぜかベッドに組み敷かれ、熱い唇を重ねられている。

「颯くん…?」

一体どうして?
そんな疑問を瞳に宿して見上げれば、颯真は熱の籠もった視線で真っ直ぐに見つめ返してくる。

「千花」
「ん、…っ、ま、まって……」
「もう十分待った」

やんわりと肩口を押すだけの抵抗なんて物ともせず、重なっていただけのキスから、口内に舌が侵入してくる。

ベッドの組み敷かれたのも、水音のするキスも、何もかもが初めてでどうしたらいいのかわからない。

「ふ、ぁ……」

息継ぎすらも怪しくて、何度も胸を喘がせる。
それに気付いたのか、颯真はやっと唇を離して千花の頬を撫でた。

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