激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「そ、そぉくん……」
「千花。抱きたい。抱かせて」
まだ息も整わないまま直接的な懇願をされ、千花は頭がついていかない。
ただでさえアルコールでふわふわしている中、好きな人からキスをされたのだ。夢見心地になってしまう。
じっと見つめられる視線。頬に触れる優しい指。熱い唇。どれも自分を欲してくれているのかと思うと、喜びに陶酔したくなる。
この結婚は政略的なもので、そもそも自分は姉の身代わり。颯真が愛しているのは姉の弥生であって自分ではない。
「でも…、あの、いいの…?」
さすがにこの場で弥生の名前を出すのは躊躇われ、なんとも抽象的な聞き方になってしまった。
「俺たちは夫婦で、今ここには新婚旅行に来てるんだ。違う?」
確かにその通り。だけど自分たちは普通の夫婦とは違う。
それは颯真だってわかってるはず。いや、正確に言えば、颯真の方がわかっているはずだ。
「そう、だけど…」
「じゃあ問題ない。だろ?」
問題はないのだろうか。
結婚式の当日にすら弥生からの連絡を待っていたというのに、本当に颯真は自分を抱く気でいるんだろうか。