激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
わざと耳元で名前を呼ばれれば、せっかく噛み締めていた唇から吐息混じりの声が漏れ出る。
「可愛い」
「そぉくん…いじわる…」
してやったりと笑う颯真の顔は壮絶な色気を孕んでいて、千花はまた颯真の新たな一面を見たと感じた。
(とんでもなく甘かったり意地悪だったり…。婚約時代の紳士な颯くんと違う……)
身体を這い回る手が下の方へも伸ばされ、固くなる千花を宥めるように首筋に吸い付き、所有の証を刻まれる。
「あ…っ」
「俺の奥さんって証。綺麗についた」
まるで本当に愛しているかのような独占欲を感じさせる台詞に、千花は瞳を潤ませる。
颯真は優しい。
この結婚に乗り気ではないにしても、きっと千花のことを大切にしてくれる。
だからこそこうして夫婦の営みも、義務とか嫌々しているといった素振りを出さずに、丁寧に抱いてくれようとしている。
それ以上、何を望むというのだろう。