激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
かなり裕福な家庭で大きな庭付きの戸建てで育った千花にとっても、初めてこの新居に訪れた時はまるでホテルのようだとカルチャーショックを受けた。
玄関ホールを抜けてリビングに繋がる扉を開ければ、手前にIHのクッキングヒーター、食洗機、ディスポーザーなどを兼ね備えた使い勝手の良いアイランドキッチン。
奥には都内を一望出来るような景観の広がる大きな窓。リビングに置かれたソファやダイニングテーブルなどの家具は、少しでも早くこの生活に慣れるようにと、颯真が千花の好みに合わせて温かみのある木製のものや落ち着いた色味のものを選んでくれた。
間取りは5LDKで、主寝室と各私室の他は客間として整えてあり、後に子供部屋にすればいいと颯真から言われた時はなんと答えたら良いのか分からず、小さく頷くだけに留めた。
新婚夫婦2人で暮らすには広すぎる部屋ではあるものの、未来の不動産王の住まいとしてはこれくらい当然なのかもしれないと無理矢理自分を納得させた。
6人掛けの大きなダイニングテーブルに色違いのランチョンマットを用意し、メインであるロールキャベツのトマト煮、野菜ときのこで作ったピラフ、アボカドとスモークサーモンのサラダを並べる。
「お待たせ。手伝うことある?」
カッチリしたスリーピースのスーツから、ボートネックのトップスとネイビーのパンツというラフな部屋着に着替えた颯真が、千花の手元を覗き込む。
「ううん、大丈夫。何飲む?」
「トマト煮なら、赤ワインにしようかな」
「あ、お祝いで貰ってあけてないやつあるよね。それ出すね」
壁側の上部の収納に背伸びをしながら手を伸ばすと、後ろから肩を抱き込まれる。