激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「危ないだろ。俺が取るよ」

長身の颯真は軽々と桐箱に入ったワインを取り出し、千花の頭をぽんぽんと叩く。

「…私も届くよ?」

154cmという女性の平均数値に満たない身長がコンプレックスな千花は、なんとなく不満に思い上目遣いに睨む。

「無理して落として割ったら危ないと思っただけだよ」
「大丈夫なのに。…子供扱いしてない?」
「してないしてない」

可笑しそうに笑う颯真を見て、やっぱり子供扱いされている気がすると頬を膨らませる。

「ほら。冷める前に食べよう、奥さん」

むくれた口元にちゅっと軽いキスを落とし、そのままワイングラスを取りに行く颯真。

そんな甘い機嫌のとり方をされればずっと拗ねているわけにもいかず、千花は真っ赤になってその後を追うしか出来ない。

(颯くん、甘すぎるよ……)


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