激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

小学校から高校まで同じ学校に通っていた陽菜は霧崎商事の社長の1人娘で、子供の頃から決められている婚約者がいる。

両親が厳しく、なかなか自由がないという点では千花と同じなのに、陽菜はその圧力に屈しないパワフルな女の子だった。

小学校の時にクラスが同じだったのがきっかけで親しくなり、似た境遇ということも相まって、何でも話せるいちばんの親友となるのに時間はかからなかった。

大学は千花が両親の命令により外部進学したため、そのまま付属大学の児童教育学科に行った彼女とは離れてしまったものの、こうして今でも連絡を取りあっている。

「あ、これウィーンのお土産」

新婚旅行で陽菜へお土産として購入したのは、ハプスブルク家も御用達だったという宝飾店のピアスと、チョコレート専門店のボンボン・ショコラ詰め合わせ。丸い缶にはエリザベートの肖像画がプリントされている。

「わー、ありがとう!新婚旅行どうだった?」
「うん、楽しかったよ」

千花は先月の旅行を思い出し、笑顔で答えた。

颯真との婚約の一連の流れも、その後の千花の気持ちも全て知っている陽菜は、怪訝な顔で千花を見つめる。

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