激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「……はい、誓います」
心の中に渦巻く虚しさを抱えつつ、それでも自分は本心からの言葉なのだと信じてもいない神様に言い訳をする。
千花は新郎である颯真と向かい合うと、リングピローから指輪を取り、互いの薬指にはめた。
この指輪を買いに行ったのはおよそ1年前。
当時大学4年になったばかりの頃、そろそろ結婚式の準備をと両家の両親から言われ、颯真と2人、有名高級ジュエリー店で購入した。
奥まったVIPルームに通され、当然ながら値札のついていない指輪をずらりと並べられ困惑した千花に、『一生身につけるものだから、気に入るデザインを選んだらいい』と言ってくれた。
結局は一番シンプルなラウンドダイヤモンドが1石セッティングされた颯真と揃いのデザインを選んだ千花に、苦笑しながらも『千花ちゃんがいいなら』と即決したのだった。
(それだって、きっと軽自動車は買えちゃう値段だったんだろうな…。とはいえ高級外車並の値段の指輪なんてつけていられない…)
分不相応だと思ったところで仕方がない。
なにしろ相手はあの月城不動産の御曹司なのだ。
ゆっくりとベールを上げられ、素肌の肩に颯真の手が置かれると、否が応でも鼓動が早くなる。そんな自分を滑稽だと思ってもどうしようもない。