激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「もう大変…。子供たちは可愛いけど、やること多すぎて毎日必死」
「そっか。やっぱり働くって大変なんだね」
熱々のマルゲリータを口に運びながら肩を竦めてみせる陽菜に、千花は真面目な顔をして相槌を打つ。
「でもめちゃくちゃ楽しいし充実してる!絶対この生活を続けてみせるわ」
「ご両親、まだ折れてくれなさそう?」
「もうずっと平行線」
陽菜にも千花と同様、両親に決められた婚約者がいる。
麻生怜士(あそう れいじ)というASOホールディングスの御曹司で、千花や陽菜と同級生である。
千花は詳しいことは知らないが、会社同士の結びつきで子供同士を結婚させようとなったらしく、互いが25歳になったら入籍させようと動いているらしい。
陽菜も怜士も中学の頃までは仲が良かったし、学園内でも公認カップルみたいなものだった。
実際、千花も陽菜は怜士のことを好きなんだろうし、逆もまた当然そうだと信じて疑わなかったくらいだ。
しかし、高校生になった頃から2人の関係は変わっていった。
怜士が、陽菜以外の女の子と遊びだしたのだ。
もともと目立つ容姿と肩書を持っていた怜士はとてもモテる。
彼が女遊びを覚えたという噂はあっという間に広がり、いつの間にか彼は学年一の遊び人として名を馳せるようになった。