激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
陽菜はそんな怜士を今は毛嫌いしており、断固政略結婚はしないと両親へ反発している。
しかしASOホールディングスに恩があるのか、陽菜の両親は遊んでいるらしい怜士の噂が耳に入っていてもそれを咎めることもなく、いまだに娘を嫁がせるつもりでいるらしい。
「でも負けない。『お嬢様育ち』なんてバカにされない程度には資格もあるし、2年後にはもう少し貯金も出来てるはず」
陽菜は高校生の頃から両親に隠れてバイトをし、保育士や栄養士の資格、さらには通信教育で簿記検定や秘書検定まで網羅し、いつ両親に縁を切られても1人で生きていけるよう準備を進めているという。
「怜士と結婚だなんて冗談じゃない。今だけ実家で大人しいふりしてるけど、25になっても理解してもらえなければ霧崎の家とは縁を切る。私だって人並みに恋愛したいし、結婚は私だけを見てくれる人じゃないと絶対嫌!」
陽菜の力強い決意が、千花の胸に強く刺さった。
―――『結婚は私だけを見てくれる人じゃないと絶対嫌!』
それは当然の主張であり、本来結婚とはそういうものであるべきだと思う。
けれど何の因果か、自分たちにはそれが当たり前の権利として与えられていない。
世間から『お金持ち』や『お嬢様』だと羨ましがられたり時には妬まれたりもしたが、決していいことばかりではなかった。