激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

常に優秀な姉と比較され、『姉と違い妹の方は微妙』という視線に晒されてきた。

自由に遊ぶ時間も何かを選ぶことも諦めてきた。なにもかもが籠の中の鳥。

きっと弥生は、それが窮屈で出ていってしまったのだろう。愛する婚約者である颯真がいたにも関わらず…。

そんなことを考えて黙ってしまった千花を見て、失言だったと陽菜は慌てた。

「ごめんっ、違うよ!怜士が最低の女ったらしのクズだから嫌だってだけで、千花と月城さんの結婚を否定してるわけじゃないからね!」
「大丈夫、わかってるよ」

陽菜はいかにもお嬢様といった可憐なルックスを持ちながら、中身はとてもしっかりとした女性で、言いたいことは口に出す辛辣な一面もある。

裏表のない陽菜だからこそ千花は彼女が好きだし、長く付き合っていられるのだと感じていた。

安心させるようにしっかりと目線を合わせて微笑むと、もう1度「ごめん。もうこの話題やめよっか」と謝ってから、職場の可愛い子供たちの話を聞かせてくれる。


「そうだ!それでね、うちの保育園のことで千花に相談があるの」
「ん?」
「千花、栄養士として働いてみる気ない?」
「えぇっ?!」

突然方向転換された話題に、千花の手にしていたドリンクがグラスの中で大きく揺れた。

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