激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「ゴールデンウィーク前にね、うちで長く働いてた栄養士さんが近々退職したいって申し出があったらしいの。でもこの新年度が始まっちゃった時期じゃ、求人を出しても全然見つかりそうにないって園長先生が言ってるのを聞いて、千花ならどうかなって」
「保育園の、栄養士…」
「うん。千花、元々保育士志望だったでしょ?ちょっと業種は違っちゃうけど、栄養士も子供たちと接する機会だってあるし。あ、もちろん無理にってことじゃないよ。専業主婦だって立派な仕事だし」
話を聞くと、抜けてしまう栄養士さんはフルタイムではなくパートタイマーとして働いているらしく、週に3日、6時間程度の勤務になるということだった。
(正直に言えば…働いてみたい…)
陽菜の言う通り、元々保育園や幼稚園で働くのが夢だった千花は、聞いたばかりの話に飛びつきたい気持ちになる。
(でも颯くんの奥さんとして彼を支えるには、働いてる場合じゃないんじゃ……)
つい最近、颯真が自分と向き合ってくれているのではと感じ、彼に釣り合う妻になるよう努力しようと決意したばかりだ。
いくら時間を持て余しているからといって、月城不動産に嫁いだ嫁が栄養士としてパートで働くだなんて、両親はもちろん大反対だろうし、颯真だって許してくれるのかわからない。