激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

月城不動産の前身は、颯真の曽祖父の実家が営んでいた小さな呉服屋だった。
それを会社化したのが曽祖父、さらに時代を読み事業のひとつでしかなかった不動産業に一本化し、ここまで大きくしたのは祖父の月城廉次郎、戦後日本一の不動産王その人である。

呉服屋から現在の月城不動産と社名を変えたのは1941年。今年で80周年の節目を迎えるにあたり、大規模な創立記念パーティーが行われることになっていた。

折しも後継者である颯真が結婚したこともあり、前回の70周年のパーティーよりも賑わいを見せるであろうことは想像に難くない。


「千花、今度の土曜って予定あいてる?来月のパーティー用の買い物に行きたいんだ」

結婚式前から創立記念のパーティーがあると知らされていた千花は、何の疑問も持たずに頷いた。

「うん、大丈夫」
「ごめんな、面倒な仕事に付き合わせて」
「平気だよ、パーティーならお父さんについて何度か出てるし」

とは言ったものの、内心緊張と不安でドキドキしているのを気取られないように必死だった。

颯真に言ったことは嘘ではない。
スターライト・フィナンシャルグループ社長の娘ということもあり、幼い頃から社交の場には何度か出たことがあった。

和やかに見える会でも、裏では仕事の話や取引の交渉など、大人たちの策略が張り巡らされていることは知っている。

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