激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「お待たせしました、千花さん。部長に代わりお迎えに上がりました」
雲ひとつなく晴れた土曜のお昼過ぎ、指示された通りマンションのエントランスで待つこと3分。休日だというのにかっちりとしたスーツで現れた長身の男性に頭を下げた。
「初めまして。森…、月城千花です。わざわざ迎えに来て頂きすみません」
未だに月城姓を名乗ることに慣れないと思いながら、目の前の宮城に視線を上げる。
細いシルバーフレームの眼鏡の似合う、いかにも秘書といった仕事の出来そうな男だった。
今日は本来なら午前中から颯真と出掛ける予定だったが、出勤せざるを得ないトラブルがあったらしく、彼は「昼過ぎには終わらせる。連絡するからいい子で待ってて」と言い残して朝早くから出社していった。
そして千花がひとり家で簡単な昼食を済ませた頃、颯真から『秘書を迎えに行かせるから、30分後にエントランスに降りてて』とメッセージを貰い、慌てて支度をして今に至る。
「初めまして、ではないですね。一応披露宴にも出席させていただきました。月城部長の秘書を務めております宮城と申します」
「え?!あ、ご、ごめんなさい…っ!」
慌てて謝罪をする。
それはそうだ。颯真の秘書ならば披露宴に招待していないほうがおかしい。
しかしあの結婚式は月城家と森野家の結びつきの儀式という認識であり、千花は招待客の詳しい名簿などを見ることすらなかった。