激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「だから少し戸惑ったんだ」
「……え?」
「秘書として部長の奥様を迎えに行くか、同級生自慢の可愛い妹を迎えに行くか」
―――颯真の妻か、弥生の妹か…。
ズキンと胸の奥が痛んだ。
きっと宮城に他意はない。
ただ単に他人行儀に秘書として接するか、今のようにフランクに接するかという話なだけだ。
しかし身代わりで結婚をした千花にとって、それは天と地ほどの差があった。
「弥生とは、まだ連絡取れない?」
「…はい」
「そっか。今頃どこにいるんだかなぁ」
「あの、話し方…、今みたいに宮城さんの話しやすい方で…構わないです」
弥生の話題を遮るように小さく言うと、「じゃあ仕事中以外は楽にさせてもらおうかな」と笑う。
「ごめんね、今日はせっかくのデートだったのに」
「いえ、そんな。お仕事なら仕方ないです」
それにパーティーのための買い物なので、きっと颯真にとってはデートというより仕事に近い。