激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「ごめん、千花。迎えに行けなくて」
「ううん。でも私1人でも来られたのに」

車から降りてきたのを見つけた颯真が駆け寄ってきて、そっと頬に触れられる。

宮城の前だというのに近すぎる距離感に驚き、さりげなく頬から手を外して一歩後ずさる。それは気恥ずかしさなのか、先程弥生の話が出た名残なのか、自分でもわからなかった。

「千花?」

拒むような千花の反応に眉を寄せた颯真だが、宮城の存在もあってかそれ以上の追求はされなかった。

「では月城部長。私はこれで」
「あぁ。休日に悪かった」
「そう思うなら目の前でイチャつきだすのは控えてくださるとありがたいですね。1人もんには目に毒なので」

宮城は秘書の口調ながら、かなり砕けた態度で颯真に接している。
やはり同級生という気安さもあるのだろうが、2人の長年の信頼のようなものを感じた。

「…イチャついてはないだろ」
「無意識かよ。ま、暴走して新妻を困らせるなよ」
「大きなお世話だ」
「じゃあ千花ちゃん、また」
「は、はい。あの、送ってくださってありがとうございました」

秘書モードから友人モードへの切り替えが見事すぎてついていけず、しどろもどろになりながらお礼を告げて頭を下げる。

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