激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


軽くメイクを直し化粧室を出ようとすると、廊下にある休憩スペースから女性の話し声が聞こえる。

「なんか意外と地味っていうか。まだ子供?」
「部長の5個年下だって。大学出たての生粋のお嬢様」
「へぇー、もっと若く見える。それにしてはお嬢感なくない?銀行の社長令嬢なんだよね」

自分たちの話をされているのだと、千花はギクリとして足を止めた。

ドレスや着物といった盛装の人ばかりの中で、彼女たちは華やかさは有りつつもスーツスタイル。

颯真を部長と呼んでいることからも、きっと月城不動産の社員で、このパーティーの運営に関わっているんだろうことは察せられた。

「噂だけど、本来部長と婚約してたのって、奥様のお姉さんだったらしいわよ」

一番触れてほしくない部分に話が及び、ゆっくりトイレに後ずさりしたところで身体が固まってしまう。

「え、そうなの?!」
「お姉さんの方は凄い美人で部長とも同い年だって、部長と同じ大学の友達が言ってたもの。才色兼備で有名なカップルだったみたい」
「なのに妹の方と結婚?なんで?」

弥生が婚約直前に失踪したことは一部の人間しか知らず、厳重な箝口令が敷かれていた。

< 62 / 162 >

この作品をシェア

pagetop