激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「小学生の頃、作文に保育士さんになりたいって書いてたな」
「おっ、覚えてたの?!」
まさかそんな昔のことを颯真が覚えているとは思わなくて驚いた。
「正直、森野家のご令嬢には難しいだろうなって思った。あの厳しいお義父さんなら、働かせるにしても自分の手元なんじゃないかって」
「…でも、颯くんは夢が叶うといいねって言ってくれた」
当時既に高校生だった颯真には、きっと現実が見えていたんだろう。それでも無理だなんて言わずに、そっと千花の想いに寄り添ってくれた。
あの優しい微笑みに、小学生だった千花は淡い初恋を抱いたのだ。
「うん。本気でそう思ったから」
「あの時、すごい嬉しかった」
「だからこそ、少し形は違ってしまうけどせっかく保育園で働ける機会があって、それを千花が望むのなら、俺は反対なんかしない。千花がやりたいと思うのならやってみたらいい」
颯真の言葉がじんわりと胸に沁みる。
嬉しかった。
自分の意見を尊重し、選ばせてくれる。
たったそれだけのことだけど、昔からずっと諦めてきたことだった。