激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


「いやー、千花は絶対いい保育士さんになってたよ!やっぱりもったいなかったなぁ」

陽菜が3杯目のビールを飲み干して言った。

もう両親から交友関係に口を出されることもないため、狭かった千花の世界は広がり、職場の仲間と連絡先を交換するのも自由。

9月最後の金曜日。
颯真は一昨日から九州に出張で不在のため、仕事を終えたあと少し時間を潰し、陽菜と他の同僚2人の4人で近くの居酒屋で夕食を摂りながらお酒を飲んでいた。

「野菜の紙芝居で偏食克服だっけ?あれお母さんに感謝されたでしょ」

そう言ってくれるのは、陽菜の2年先輩保育士の山崎望(やまざき のぞむ)。
男性にしては小柄で優しげな顔立ちをしていて、女性保育士が多い中でもうまくやっていけるコミュニケーションスキルに長けた人物。

よく園内で女の子が「のぞむ先生のお嫁さんになる」なんて言ってるのを耳にする。

お酒が大好きで、よく陽菜と飲みに行く仲らしい。

「ひかりちゃんママに今日はお昼完食でしたって話したら、紙芝居の栄養士さんによろしくってお迎えの時凄い嬉しそうだったもん」
「ふふ、少しは役に立ってるならよかった」
「でも月城さんはなんで保育士にならなかったんだ?」

そう千花に疑問を投げかけたのは矢上慎介(やがみ しんすけ)。栄養士として働く千花の先輩にあたり、彼が基本教育係として色んな面倒を見てくれていた。

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