激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「ベテラン癒し系栄養士が減っちゃったところに千花が入ってくれたんですもん」
「まぁそうだな。月城さん調理の手際もいいから助かってるし」
「そんな。まだまだです」

実際、長年働いていた越智の抜けた穴を埋めるほどの技量は、まだ千花にはない。特に季節行事なんかは知らない風習やその由来なども多く、園児と一緒に勉強している状態だ。

千花が謙遜して首を振ると、向かいに座っている山崎がにやりと口を開いた。

「確かに助かってるかも。月城さん来てから、矢上が子供たちと遊んでくれるようになった気がするし」
「え?」
「おい、山崎」

隣でじろりと睨む矢上に構わず、山崎は飄々と話し続ける。

「食育に情熱注いでる割に、あんまり子供と積極的に関わってなかったんだよ」
「…俺は裏方でいいんだよ。怖がらせたって可哀想だろ」
「でも最近は午後に園庭に出てきてくれること多くなっただろ。何ていうか、強面なのは変わんないのに表情が優しくなったっていうか。これって月城さん効果?」
「え?私ですか?」

全く関係がないようなところで自分の名前が出て驚いていると、若干酔いが回って顔を赤くした陽菜が言葉を続ける。

「わかります!千花のそばって癒しオーラが出てるっていうか、近くにいるとみんな優しい気持ちになれるんですよね」
「癒しオーラって、何それ…」
「子供たちもすぐに懐いてたし。矢上さんも千花の癒しオーラで懐柔されちゃったってことですよね」

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