激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「ただいまー」
誰もいないとわかっている部屋に帰宅の挨拶をしてしまうのは、ほろ酔いでいい気分だからか、颯真が出張で不在なのが寂しいのを誤魔化すためか。
いつもなら帰宅後は颯真のために栄養を考えた料理を作るところだが、この3日間はその必要はない。
仕事を始めた当初こそ家事との両立は大変だったが、今は食材の買い置きや料理の下準備のペースが掴めてきたこともあって、効率よく出来ていると思う。
颯真が出張で家をあけるのは、結婚してからこれで3回目。前回よりも寂しさが募っているように感じ、千花は小さく身震いした。
姉の身代わりになってした結婚だったが、思った以上に幸せな毎日を送っている。
結婚式以来、彼の口から姉の名前が出てくることはなく、やはり千花と少しずつでも夫婦になろうとしてくれているのではと感じる。
それどころか、颯真はもしかしたら自分を愛してくれているのではと思いたくなるほど甘い。
仕事を始めてからも、何かと大変なことはないか、無理はしていないかと確認してくれる。
その日保育園であった嬉しいことを夕食の時に話すと、まるで自分のことのように嬉しそうに聞いてくれる。
そんな颯真の態度に、千花はますます彼を好きになっていくのを自覚していたし、いつかは彼に本当に愛されたいと望んでしまっている自分自身の気持ちも認めざるを得なくなっていた。