激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


集中してノートに向かい合い、どのくらいの時間が経ったのか。

「ただいま、千花」
「きゃっ!?」

1人黙々と作業していたところに急に声を掛けられ、千花は身体が浮き上がるほど驚いた。

「え、颯くんっ?」
「ごめん、驚かせたか?随分集中してたな」

玄関のドアがあいたことに全く気が付かなかった。それに、なぜ今颯真がここにいるのか。

「あれ?帰ってくるのって明日の午前中だったよね?」

予定では土曜日の昼前に帰ると聞いていた。だからこそ、夕飯を作らなくていいからというのと、寂しさを紛らわせるというのもあって、仕事終わりに飲みに出たのだ。

「夕方からの会合が思いの外早く終わったから最終便で帰ってきた。メッセージ入れたんだけど気付かなかった?」
「うそ、ごめんっ」

慌ててスマホを見れば、確かに21時前に【早く終わったからこれから帰るよ】ときている。ちょうど居酒屋から出る直前の時間で全く気付かなかった。

「ごめんなさい、気が付かなかった。ご飯は食べた?何か簡単なもの作ろうか」

夫の帰宅の連絡に気付かず同僚とお酒を飲んでいただなんて、妻失格ではないか。

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