激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
一方の颯真は学校の外で相手から請われるままに恋愛ごっこのようなものを何度か繰り返してみたものの、結局心惹かれる女性に出会うことはなく、自分には恋愛や結婚は向いていないのかもしれないと考えていた。
そして迎えた大学卒業の時。
いよいよ月城家と森野家が動き出しそうだと悟った颯真は、弥生と共に婚約破棄に向けて話をすすめる予定だった。
しかし卒業式の翌日、弥生は何も言わずに失踪してしまった。
2人で両家に話をしようと計画していたため、彼女の珍しく身勝手な行動に眉を顰めたものの、これで婚約や結婚の話が立ち消えるのなら結果オーライと思っていた。
しかし、話はそれで終わらなかった。
森野家は月城家の比でないくらいの騒ぎになったのだろう。何を思ったのか、弥生が失踪して半年もしないうちに、彼女の5つ下の妹である千花を差し出してきたのだ。
動物の交配じゃあるまいし、あっちがダメならこっちでなんてどうかしている。そう思ったのは颯真だけだったらしく、両親はあっさりと婚約者の変更を認めてしまった。
弥生の妹である千花のことは颯真も知っていた。
元々シスコン気味だった弥生からよく『うちの千花は世界一可愛い』と話を聞いていたし、社交の場で何度か顔を合わせたこともあった。森野家へ遊びに行ったときには勉強をみてあげたこともある。
弥生とは似ておらず、小柄でくりっとした目鼻立ち。人見知りなのかあまり口数は多くなかったけど、恥ずかしそうに「颯くん」と呼び、笑うと名前の通り花のように可愛らしい女の子だった。