激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

そんな千花との婚約話が持ち上がったのは、颯真が社会人1年目。千花にいたってはまだ高校3年生の時。

さすがの弥生も、まさか自分がいなくなったことによって可愛い妹に颯真との婚約の話がいくとは思いもしなかったのだろう。

当初の計画通り、婚約の話をなかったことにするために慎重に話を進めれば、きっとこんなことにはならなかったに違いない。

そう考えた颯真はなんとしても弥生に連絡を取りたくて行方を探したが、結局見つけることは出来なかった。

そうこうしている間に、千花は子供の頃から夢だったという保育士になる道を絶たれ、女子大に進路を変えさせられ、当時付き合っていた彼氏とは別れさせられてしまったと聞いた。

なんとか弥生を探し出そうと手は尽くしているけど見つからないのだと千花に告げると、彼女は悲しそうにどこか諦めたような顔をして笑ったのを今でも覚えている。

両親には結婚相手くらい自分で選ぶと伝えても暖簾に腕押し。あまりにも千花が不憫で、両家の親はもちろん、自分の不甲斐なさにも、何も言わずに消えた弥生にも怒りが湧いた。

あれだけ妹を大切に思っていた彼女のこと。もしかしたら千花にだけは連絡しているのではと会うたびに聞いてみても、返ってくる答えは毎回同じだった。

その後、なんとかこの馬鹿げた婚約話を撤回出来ないかと1人思案していたものの、結局こうして結婚するに至ったのは、何度か千花と食事をするうちに彼女に惹かれてしまったからに他ならない。


< 88 / 162 >

この作品をシェア

pagetop