激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


颯真はソファでくったりと眠りにつく千花のあどけない寝顔を見つめ、額に張り付いた前髪を横に流してやりながら苦笑した。

(『さみしかった』と自分で言わせておきながら煽られてしまった…)

剥き出しの肩にスーツのジャケットを掛けてやり、無理をさせてしまったのを詫びるよう髪を梳きゆっくりと頭を撫でる。

(本当に…可愛すぎて困る)

千花を知れば知るほど、彼女に溺れるように惹かれていく。

大きな瞳にぷっくりとした唇の愛らしい顔立ち。その表情がコロコロ変わるのを見ているのが好きだった。

初めは弥生の失踪を止められなかった罪悪感と、たいして親しくもない5つも年上の男と婚約しなくてはならない不憫さから食事に誘い、仕事先で貰ったお菓子を渡しただけだった。

たまたま自分が担当する施設のテナントに入る、日本初上陸のベルギーチョコ専門店のフィナンフェ。部内に差し入れするには数が少ないが、颯真は甘いものが特段好きなわけではないので千花に貰ってくれと差し出した。

すると千花は嬉しそうに笑ってくれたのだ。

『わぁ!いいんですか?私甘いものの中でも、特にチョコが大好きなんです!』

花が綻ぶような笑顔というものを初めて目の当たりにし、もう1度見たいと出張のたびにその土地で美味しいと評判のパティスリーを検索した。

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