激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
千花が不貞を働くとは思っていないが、それでも胸にどす黒い嫉妬心が湧き上がるのを抑えることが出来ない。
次の日、「明日、朝から出掛けないか。たまには少し遠出しよう」とわざと『Yagami』と同じ日に誘いをかける自分の狭量さにうんざりしつつ、それでも千花があの花が綻ぶような笑顔で頷いてくれたことが嬉しくてたまらなかった。
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月城家の跡取りとしてプレッシャーを感じることはないのかと聞かれることがあるが、颯真は家業である不動産事業が嫌いではなかった。
特に今在籍している都市開発本部の仕事というのは、何もないところに自分たちが考えたものが実際に出来上がり、それが人の流れを変え、生活スタイルが決まり、物流が生まれ、地域が発展していく。
実現することにやり甲斐を感じるし、ひとつの大きなプロジェクトが動き出せば、プライベートな時間も常に仕事について考えているような仕事人間だった。
「このあと11時からの水上建設の方との打ち合わせはこちらが出向きますので30分前には社を出ます。15時から開発部全体のミーティング。駅直結の複合施設誘致の件で地権者の河野様と会食は、19時に清瀬亭の予約を入れてあります」
しかし結婚して新婚生活を満喫している今、淡々と今日のスケジュールを伝えてくる宮城に対し、出張や会食の多さを愚痴りたくもなる。