激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
そんな妻のことが愛おしくて仕方がない。
本来なら人前なんかに出さず、周囲の雑音なんて聞かせずに、ずっと家の中に閉じ込めておきたいほど。
しかし現実にはそんなことは不可能で、千花はその努力家な面を今は仕事に向けて頑張っている。
先日もハロウィンのイベントのおやつに自分のメニューが採用されたのだと嬉しそうに話してくれた。
今日は颯真が会食だと知り、金曜なので職場の仲間で飲みに行くのだという。
(『Yagami』もその場にいるんだろうか…)
1ヶ月程前に彼からのメッセージの通知を見てしまって以降、どうにも職場の飲み会というものに危機感を感じてしまう。
自分の贈った結婚指輪をしているため、千花には相手がいるのだと当然周囲は認識しているはずだ。
それなのにこんなにも落ち着かないのは、やはり千花の想いが完全に自分に向いていると確信出来ないからだろうか。
夫婦としてうまくやっているとは思う。しかし自分が千花を想う程、彼女に愛されているという自信はまだ持てていない。
絶対に振り向かせたいと思いながらも颯真が自分から「好きだ」と言葉にしないのは、どこかこの結婚を利用して無理矢理千花を自分のものにしたという後ろめたさがあるからだった。