激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
「姉妹でも弥生とは全然タイプが違うもんだな」
「同じ優等生でも、弥生は要領良くこなすタイプだったから」
宮城との共通の友人であり、今では義姉である弥生の名前を久しぶりに聞き、颯真は再度ため息をついた。
事情はわからないが全てを捨てていなくなってしまった弥生と、そんな姉の代わりに嫁げと言われたのを、淋しげに笑って受け入れた千花。
月城家の嫁として懸命に尽くそうとしてくれているのは十分伝わっている。
しかし颯真が1番欲しているのは千花の心だった。彼女と『恋』がしたい。決められた夫婦だからという体裁を取り払い、純粋に愛し合いたい。
そのためには、懸念事項は潰しておくに限る…。
「あー、千花不足だ…」
「重症だな」
職場で臆面もなくそんなことを言う颯真に驚きつつも、宮城が笑って茶々を入れる。
「あ、そういえば初めて千花ちゃんに会った時に思ったんだけど」
「よし。今日の会食が終わり次第、千花を迎えに行く」
ふと宮城が何か思い出して言いかけたのと同時に、颯真は宣言するように立ち上がった。
「は?」
「夫が同僚に挨拶するのに、何に問題もないはずだ」
「…何の話だ?」
眉間に皺を入れる秘書を横目に颯真は頭を切り替え、午前中の打ち合わせに使用する資料を読み込み始めた。