激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
(やはり『Yagami』も一緒だったか…)
颯真の胸に焦りが滲む。
「えー!でも私も矢上さんの恋バナは気になるなー」
「でしょ?もう1軒行って聞き出す?」
「いいですね!」
「ちょ、陽菜ってば。山崎先生も、そろそろ帰ったほうがいいですよ」
「えぇー、月城さんは気になんない?むしろ月城さんはどうなの?彼氏いないなら矢上はおすすめだよー」
「おい、山崎…」
山崎と呼ばれる男は酔っているせいか声が大きい。とても看過できない内容に、颯真のこめかみがピクリと引き攣った。
「いえ、あの私は…」
「ちょっと無愛想だけど優しいやつっていうのは1番近くで働いてる月城さんだってよくわかってるでしょー?」
「あ、それはもちろん」
「だったらさー」
「千花」
酔っ払いの戯言を断ち切るように颯真が張りのある声で千花を呼ぶと、ビルの前でわいわい喋っていた4人が一斉に振り返った。
驚いた顔をした千花の隣にいる女性には見覚えがある。彼女が千花の学生時代の友人で、職場に誘ってくれた本人なんだろう。確か結婚式にも来てくれていた。