タツナミソウ
混乱していると、深澤君が笑い出したから上を見上げた。

「や、ごめんごめん。すっごい面白い顔してるからさ。まあなんとなく考えてる事はわかる。俺の家が定食屋なのは本当だよ。でもごめん。弁当は嘘。幸子の彼氏に料理の本なんてなんで見てんの?て聞かれたから俺の家の事答えたんだ。うまく誤魔化せただろ?」

「え、あ、そうなの。ごめん。ありがとう。」

思っていた事が全部お見通しでなんか少し恥ずかしくなった。それと同時に頭の中にいい考えが浮かんだ。

「え!てかさ、私に料理教えてよ!」

本とかだったら、またよくわからない事も多いし前日にバタバタしても嫌だし。深澤君に実践して教えてもらえればそんな事はないし、定食屋さんの息子なら、もう絶対美味しい物ができるじゃん。なんて考えていた。

「え、なんで俺が、幸子の彼氏のために料理教えなきゃいけないんだよ。」

「なんで!!減るもんじゃないんだし!いいじゃん!ね?ね?」

めんどくさそうな顔をしている深澤君にこの熱意を伝えたくて、どんどん顔を近づけた。逃がさないように両腕をがっしり捕まえて、少し踵を上げた。つま先だけで立っているのが辛くてどんどん体重をかけて、深澤君のワイシャツのシワが増えた。

「ああ。もういいよ。わかったって。教えるから!今度の土曜日うちでやるぞ。」

「え!まじ??やった!!ありがとう!」

嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねた。床が抜けるぞとか真面目な顔で深澤君がいうから、もっと飛んでやった。
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