タツナミソウ
「ねえ!幸子さん!起きてって」

体を揺さぶられているのが気持ち悪くて目が覚めた。
あの後、私が眠ってしまって、翔平君の家のベットまで運んでくれたらしい。

ああ。夢だったのか。
そう思っていたとき、翔平君から手紙を渡された。亮太からだと言う。また、冗談なの?もし本当だったら嬉しいと言う気持ちと、そんなわけない、からかわれているのか、という怒りとで言葉が出なかった。そして、起き上がり何も言わずに受け取り読んだ。

「チコ、翔平へ
いきなりごめんな。2人とも混乱していると思う。信じてくれないかもしれないけど、翔平の体を借りて、またこの世に戻って来られる事になったんだ。戻る方法は、どちらかが相手にキスをする事。場所はどこでもいいから。唇が当たると、俺と翔平が入れ替わるんだ。
なんで今こうなったのか、俺もわからないのだけど、きっとチコにまた会いたいという強い気持ちがそうさせて、2人を出会わせてくれたのかもしれない。翔平ごめんな、少し体を貸して欲しい。わがままを許して欲しい。
愛してるよ。ごめんな。 亮太」

悪ふざけにしては手がこんでいる。
幸子は、「なんなの。」と手紙を翔平の胸に叩きつけようとした。

でも、翔平君があまりにも強い瞳でまっすぐにこちらを見るから、私も信じるしかなかった。
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