タツナミソウ
__10年前。私がまだ17の時。
付き合っていた彼、亮太が突然いなくなった。
信号無視をした車に轢かれて即死だったらしい。

轢かれそうになった弟君を助けて、いなくなった。最後まで亮太らしいと思う。


失恋をしたら、心にポッカリ穴が開く。というのはよく聞く話だろう。私はそれがよくわかった気がした。頭では理解できなかった。亮太がいない。会えない世界なんて考えられない。明日の朝から、いつもみたいにおはようって言ってくれる亮太がいないなんて。

世界から色が消えた。
カラフルで、どこで洗っても透明にはならない筆洗バケツはもう使う事はない。溢れ出る事もできない。
わたあめみたいな雲が、綺麗に整列して私の後をついてきた。色が出せない私の世界には、それが眩しいのかそうじゃないのかわからなくて、怖くて、羨ましくて、うっとおしくて、はらった。


この日、私は「亮太よりも好きになれる人などこの世にいない。もう恋愛はできない。しない。」と少なくなった心で思った。

大切な人がいなくなる苦しみはもう味わいたくない_______。
< 3 / 122 >

この作品をシェア

pagetop