タツナミソウ
会社に着くと、いつもは私よりも遅い舞がもう出勤していた。同じ時間の電車に乗ったはずだけど、荷物が重くて歩くのが遅かったからだろう。きっと。

「おはよ。舞!」

「あぁ、幸子、おはよ〜!遅かったね」

舞はそう言いながら、触っていた携帯をサッと置いてこちらを振り返った。話しかけるまで私が来たことに気づいていなかったようだったけどそんなに真剣になる事が携帯にあったのかな?まあ、あの例の彼氏からのラブメッセージとかそんな所だろう。靴を履きかえて上を向くと目をまんまるにさせて、固まっている舞と目があった。その姿を見て、どこか変だったかな。やっぱりお化粧濃くしすぎたかな。失敗しちゃったかな。とか色々考えて、自分のダメなところ探すようにキョロキョロした。
すると、たった3mばかしの距離をダダダっと足音を立てて、舞が小走りしてこちらへやって来た。

「どーしたの。めっっっちゃ可愛いんだけど!」

舞が私の両肩をぎゅっと握って、キスをしてしまいそうな距離まで顔を近づけてきた。反射でのけぞってしまって腰が痛むくらいには近かった。鼻の穴が少し広がるくらいには力がはいっていたから、舞の目は血走って凄い事になっていた。

「ほ、、本当?変じゃない???」

「や。ぜっんぜん変じゃない。なになに、どーしたの?デート??」

「まあ、、、。そんなもんかな?」

そう言うと舞は「うんうん。言わなくてもわかるよ。うん。」等とぶつぶつ言いながら、首を縦に振って右手の手のひらをこちらに見せてきた。「私はわかってるわ。何も語らなくても」とかも言っている。
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