タツナミソウ
「幸子は、料理できそうだよな。」

めぐみに叩かれながら、私の事を見て亮太が言った。めぐみも「うんうん。」と首を縦に振りながら同感している。
「どうしよう。全くできない。」と思いながら、それをどうしても知られたくない気持ちと嘘はだめだという気持ちが戦って

「んー。全然できないよー。」

と下を向きながら小さな声で答えた。
だから、練習しておきたかったのに、「お母さんの馬鹿」と頭の中で昨日の事を思い出していた。

「じゃあ、できない同士で頑張ろーな。」

亮太の声が聞こえて上を向くと、定規が入るか入らないかの距離に顔があった。びっくりして固まってしまっていた私を、めぐみが「あんたと一緒にされたくないだろ。」と言い亮太を叩いて助けてくれた。
この2人の関係がとても羨ましく、私もこんな友達欲しいなと感じ、いつもより少し大きな声で笑ってしまった。
そんな私を、2人はびっくりした目で見て、もっと大きな声で笑った。
教室中に聞こえてしまうほど大きな声で騒いでしまっていたから、私達の班は先生に怒られて真面目にやると約束した。

「まず、米を洗うんだってよ」

やっと、やる気になってエプロンをした亮太がレシピをじーっと見ながら言った。

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