タツナミソウ
幸子はお米の入ったボールに、シンクにあった洗剤を入れようとした。亮太はびっくりして幸子の右手をおもいっきり掴んで「何やってんだよ!」と叫んだ。

お米すら炊いた事がない幸子は「洗う」という単語を聞いて、洗剤を使おうとしてしまった。自分が料理ができないというか、全くした事がない事が皆んなにバレてしまい、顔から火が出て空が真っ赤になってしまうくらい恥ずかしかった。他の班の人にも気づかれてしまった。
静まった教室で今にも涙が溢れ出そうになった時、めぐみが大きな声でこう言った。

「幸子ってそんな面白い子だったんだ!亮太もナイスツッコミ〜!」

この言葉でクラスのみんなは、幸子ってそんな冗談言うタイプだったんだ、面白いやつとなって、私の涙は皆んなの声と共に引いていった。
めぐみが私の肩を叩いて、親指を立ててぐぅっとやった。
私はその後も、お味噌汁を沸騰させてしまったりお米の水を一合分入れ間違えたりして、失敗しまくってしまった。その度に、めぐみは「本当面白い子だね」と言ってゲラゲラ笑ってくれた。めぐみがとてもいい子だとわかったと同時に、自分の料理の出来なさに絶望した。

「いただきます。」

号令でたべはじめ食べ始めた。正直、味はイマイチだと思う。でも初めて自分で作ったご飯だったからか、今までで1番美味しい白米とお味噌汁に感じた。班のみんなは微妙な顔をして食べている。現実はそういう事らしい。亮太なんか1番酷くて、この世の物とは思えない物を食べるかの様な顔をしながら食べている。それでも完食したから悪いやつではないのだろうとは思った。

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