タツナミソウ
食べ終わった後は、少しまったりテレビを見て、2人で洗い物をした。私が洗う係で、亮太が拭く係。この日常生活の様な事が亮太とできて嬉しくて、時間がこのままとまってしまえばいいのにと願った。そんな事は叶うわけもなく、時計はカチカチ音を鳴らして、私の胸をズキズキついてくる。

「チコ?お風呂どーする?」

最後のお皿を拭き終わった時、亮太が言った。亮太とは一緒にお風呂に入った事がない。高校生だったし、実家暮らしだったからもちろん入る事はない。それに、旅行にも行った事がない。よく考えたら、お泊まりじたい初めてだ。そう思うと恥ずかしくなってきてしまった。きっと、この気持ちは亮太にも気づかれてしまっているだろう。
なんて返事しようか困っていると亮太が

「ごめん、ごめん。チコ先にお風呂行く?」

と言ったので、よかったと安心してしまった。その時の亮太の表情が悲しそうだったのは、知らない事にしておこう。まだまだ時間はたっぷりあるし、次に会える時は入れる準備をしておかないとと心に決めた。

2人ともお風呂に入り終わり、時計の針が真上でピッタリ重なった時、私は眠くなってきてしまった。
でも、亮太といる時間を少しでも長くしたくて、重力に負けそうな首を一生懸命持ち上げて、また負けそうで繰り返し。
亮太が見ていたテレビを消して、顔を近づけてきた。半分閉じかけていた目を頑張って開けて亮太の方を見つめた。
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