タツナミソウ
自分の目が瞬きを忘れた。中の黒いのがきゅうっと引き締まった。

そこには、亮太と瓜二つの男の人が目の前に立っていた。

私の中の筆洗バケツは、あの日以来使われていない。そのままだと緑のとか白いホワホワとかが浮いてきそうで怖かったから、水はかえた。このバケツが使われる事はもうないだろうと思いながら。
色なんていらないし、わからなかったから。

でも、彼を見た瞬間、バケツの1番小さい所の真ん中で薄い青色が丸く広がっていく気がした。

彼がぼやけてうつるのが鬱陶しくて、必死に擦った。胸の鼓動を隠したくて必死に胸を押さえた。
隣にいるはずの舞の声が、遠くの方から聞こえてくる気がする。大丈夫だよ。そう言いたいけれど、口を開いてしまったら全てが溢れ出てきそうで何も言えなかった。

亮太ではない。自分に言い聞かせるので精一杯だった。
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