タツナミソウ
「じゃ、亮太のとこ行くね。バイバイ!」

帰りのホームルームが終わった後、すぐに鞄を持ってめぐみにそう言って教室を出た。
2つ先の亮太の教室へ、みんなとは逆の方に向かって走った。前の方のドアから、「亮太!」そう叫んだ。私の知らない人達といる亮太は、少し恥ずかしそうにしながら友達に手を振ってから、こっちにきて「ん。」それだけ言って、教室を出た。

校門出るまでもちろん無言。でも、本当は1人で歩いている時はもっと早く歩いているはずなのに、斜め後ろにいる私をチラチラ横目で見ながら歩幅を合わせている亮太がやっぱり好きだなと思った。

私達は、バスを2本使って学校に通っている。家から駅までと駅から高校まで。駅から高校まではバスで5分かかるかかからないくらいだから、帰りはたまに歩いて帰る事にしている。高校生になったし、ダイエットしたいんだという私の嘘を亮太は多分信じてくれて、いつも一緒に歩いてくれる。亮太と少しでも長くいたいからっていうのは気付いてないんだろうな。
高校下のバス停からしばらく歩いて角を曲がった時、周りに誰もいないのを確認して、亮太の袖をクイッと引っ張った。

「なに?」

こっちを振り返ったけど、下を向いている亮太の頬にキスをした。びっくりして固まっている亮太に対して大きな声で言った。

「あたし、亮太の事大好きだよ?亮太は?」

しばらく黙って右耳を触りながら亮太が答えた。

「ん。そんなの決まってんだろ。」

「決まってるってなに?言ってくれなきゃわかんない。」

「あーーー。だから、俺だって好きだって言ってんの!」

後ろ頭をかきながら言って、そっぽを向いてしまった亮太がどんな顔をしているのか、どうしても見たくて右から左からとチョロチョロ動き回ってみた。「え?なに?亮太は?私が?」等と小さな声で呟きながら。

そこから2人で手を繋ぎながら、小さい裏道をゆっくり歩いて、今まで思っていた事を全部話した。亮太は、初めてでどうしたらわからなかった、そんな風に思わせてごめん。と言った。私こそ1人でモヤモヤしてごめん。と伝えて、2人してごめんしか言ってないねと笑い合った。
< 61 / 122 >

この作品をシェア

pagetop