タツナミソウ
付き合っていたレストランのシェフの人と別れたらしい。まあここまでは予想通りだ。しかし、心の底から好きになった人はこの人だけだったと聞かされた。
いきなり、なに?と混乱した。舞とは就職してからの付き合いだから、7年?8年?くらい知ってる。だけど彼氏がいなかった期間なんてほとんどなかった。私とは違って。
男の子がいないとやっていけない女の子。正直そんな風に舞の事を見ていた。苺のような女の子。苺ってよく見ると、ブッツブツで毛だらけでぜんっぜん可愛くないはずなのに、何故かみんなから可愛いと言われる存在。でも、赤と緑とたまに白の組み合わせとか、中身の甘酸っぱい感じとか、なによりも私は可愛いでしょオーラが勝っている所。こんなにボロクソに言っているが、私は舞の事が好きだ。つまり、舞は顔が特別整っているわけではないけど、髪とかお肌とか綺麗にしているし、明るくて優しいし、とにかく努力しているって事を言いたい。愛嬌があって可愛いと思う。けど、男の子が絡むとめんどくさいだろうなと思っていたのも事実。そこまで好きじゃなさそうでも付き合ったりしていたし、彼氏がいるって事が好きなんだと勘違いしていたのかもしれない。

よく話を聞くと、今回付き合っていた人は幼馴染らしい。家が隣で小さい頃からずっと好きだったと舞は言った。にわかに信じがたい。だって、じゃあ今までの彼氏は?好きじゃなかったの?今日は何を言われても黙って聞いて、うんうん。辛かったね。そう言うつもりだった。たけど、我慢できなくて今までの彼氏は?そう問いかけてしまった。すると、もちろん好きだったよ。と舞は答えた。え、じゃあ。言いかけたその時

「でもね、愛していたのはずっとあの人だけなの。全てを失っても一緒にいたいと思うのはあの人だけなの。」

その舞の言葉が重いのか軽いのか私にはわからなかった。それを持つ事すらもできない、いや許されないのではないかと思ってしまったから。
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