タツナミソウ
「でもさ、気になったきっかけくらいない?小さい頃から遊んでたから?」

舞は恥ずかしそうに小さな声で「ピンクのリボン」と呟いた。初めて会った時に、舞が付けていたピンクのリボンのピンを可愛いねと褒めてくれた時から彼は舞の中で特別な存在らしい。なんてありきたりな話だろう。というかそれだけで20年以上も好きでいられるのか?その好きって本物なの?これだけ長い間同じ人を好きだった自分が好きなんじゃない?ちゃんと好きな理由も言えないし。

きっと、そんな事を考えていたのが顔に出ていたのだろう。
舞がグラスを上まで傾けてドンっと置いた。

「幸子はさ、今まで好きだった人の好きなところいえる?」

そんなの沢山言えるに決まっている。優しいし、なんでもこなせちゃうし、見た目もカッコいい。いい匂いがする。えっと、、あとは、、、。

「いざ、どこ?て言われるとさ、だいたい他の人にも言えるような事じゃない?絶対その人にしかない事を持ってる人間なんていないんだよ。」

言い返す言葉が見つからなかった。たしかに優しい人なんていっぱいいるし、器用でなんでもこなせる人も、かっこいい人もいっぱいいる。でも、、、。

「でもね、その人より全てを上回ってる人が現れたところで好きになるわけではないでしょ?楽しい事をしたいのも、悲しい事を分かち合いたいのも、怒りを受け止めたいのも、全部たくみだけなの。」

たくみっていうんだ、、舞の幼馴染。

「だからね、恋してる人は皆、この人が好きだって自分に騙されてるの。どんな事があっても騙されたままでいたいって思う人が好きな人なんじゃないのかな。」

正直よくわからなかった。深い事を言ってるような、酔っ払って饒舌になっているような。
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